この歌を聞くと、本来あるべき心の居場所がわかる様な感じがします。
とても心地よく、穏やかな、ふかふかした場所。
そこへ帰ると、愛する存在があるという事に素直に感謝もできるのです。
そんな歌に出会えて良かったなぁ。

宮沢りえ



このひとの声には指があり、羽根がはえている。
聴くとその指にさわられ、羽根に遠くまで運ばれてしまう。
ほんとうに、思いもかけない遠くまで。
                      
江國香織


 
1995年夏。ボルドーの葡萄畑で1ヶ月近く撮影していた僕らは農夫の様に日焼け
した顔でパリに戻ってきた。思いがけずできた1日の休暇。僕は偶然パリを訪れてい
たジェフ・バックリーのライブを目敏く見つけ、一人オランピア劇場へ出かけた。そ
の時聴いた彼の『ハレルヤ』に心を鷲掴みにされ、揺さぶられ、不覚にも泣いた。そ
の2年後、ジェフはミシシッピ川で遊泳中に溺死。あの『ハレルヤ』は永遠に消せな
い一曲になった。
 2012年末。中島ノブユキ氏と『神様のボート』のサントラの打ち合わせをして
いた時、ふとジェフの『ハレルヤ』が頭の中に降ってきた。キリスト教的な匂いのす
る音楽にしたいね、と話していたせいかもしれない。誰かにカヴァーしてもらうこと
は出来ないか? 女性がいい、と僕が言うと、畠山美由紀さんはどうか? と中島氏
が言った。彼女の『海が欲しいのに』が好きだった僕は、あの理知的でたゆたうよう
な声で歌う『ハレルヤ』を、即座に、ありありと想像できた。そして、そのとおりの
素晴らしいトラックが出来た。
 畠山美由紀の歌う『ハレルヤ』は、ヒロインの希望と献身、そして願いそのもので
ある。

                       
監督/脚本/演出:源 孝志

more info : 神様のボート
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